
物心ついたときから、「人のために直接関われることがしたい」と漠然と考えていました。その時、ふと思い浮かんだのが「医療」であり、それを突き通して今に至るといった感じです。
また、精密機械が好きで、よくラジオや掃除機、時計とかを分解していましたね。
しっかり作らないと決してうまく動いてはくれない精密さになぜか惹かれてしまう。
よくよく考えれば、歯も同じで、単に削ってつめればいいだけではなく、咬み合わせ、光の反射、生活習慣、色合いなど、すべてが複雑に絡み合い、「歯」というものを構成しています。これを精密に分析・設計し構築させる。この過程が非常に面白い。
天職とまではいきませんが、この仕事は私の性格に非常にマッチしていると感じます。
しかし、今に至るまで寄り道しなかったわけではありません。
高校のときはパン屋さんやケーキ屋さんにもなりたいと考えていた時期がありました。
機械を使って仕事をするという部分もありますが、何よりもお客さんに「おいしい!!」と喜んでもらえる。
歯科医療も患者様に喜んで頂けますが、ケースによっては「痛い思い」を患者様が経験する必要があります。でもパン屋は違いますよね。そのようなこともあり、この「痛み」「苦しみ」「恐怖」という歯科医院が持っているマイナスイメージを「可能な限りの軽減する」という私の診療スタイルに今思えばつながっているかなと思います。
「良く説明して、患者様が納得されてから治療をする」。
医療人として当然のことですね。
これを「インフォームドコンセント」というのですが、私はこれだけでは足りないと考えています。
我々はお口の治療のプロであるとともに、患者様のよきカウンセラーでなければなりません。単に現状や治療方法を説明し、患者様の同意を得てから治療するのではなく、その間にある、患者様の本音や心情の変化などをしっかりと読み取り、それに対して適切な対応をしなければなりません。
つまり「形式化・形骸化」されたインフォームドコンセントではなく、「血の通った」インフォームドコンセントが私の診療スタイルであり理想形です。
どの歯科医師も同じことを言うと思いますが、やはり患者様にとって理想の治療ができ、心から感謝頂いた時ですね。
また、小さいお子さんからよく手紙をもらうのですが、
「歯医者さんが大好きです!!」
「大きくなったら歯医者さんになります!!」
などの手紙をもらった時は本当にうれしかったですね。
今でも家に飾っています。
「固定観念にとらわれない」ということです。
歯科材料・技術は日進月歩の世界です。日々、新しいものが生まれている。
このような状況で、昔ながらの材料・技術にとらわれていたら進歩はありませんし、患者様に対してもよりよい治療はできません。
なにも、昔のものはダメと言うつもりはありません。
ある一定の考え・スタイルに縛られないということです。良いと感じたものは、昔のものでも、新しいものでもドンドン取り入れる姿勢が大切だという事です。
そのためには、様々な文献を読み、勉強会などに参加し、常に情報を取り入れる姿勢を忘れてはいけないと考えています。
また、患者様に対して、「常に対等でありたい」という思いが強いです。
昔の医療では、ドクターが上で、患者様が下という関係がありました。
これでは、患者様の意向が反映されず、ドクターによる独りよがりの治療に終始することになります。
これではいけない。
対等な関係を築くことで、患者様が本音(意向)を伝えやすい環境を作り、それを治療に落とし込んでいく。これを忘れてはいけません。